この手、あの手。


「なんだ、都村さんなんだ」

なんだ、の一言で悲しくなる。

でも負けちゃダメだ。


「小松さん、あの、武志を好きになってごめんなさい」

「武志だなんて呼ばないでよ。武ちゃんは私のなんだから!」

小松さんのでかい声に少し怯えた。


「ねぇ、死んでって言ったじゃん」

ズキン、と心が傷む。


「嫌い、都村さんなんて嫌い! 武ちゃんは私の! 武ちゃんはずっと私と一緒なんだから!」

小松さんの、せっかく可愛い顔が台無しくらいに怖い顔をしていた。


「私が……どれだけ武ちゃんを愛してるか知らないくせに! 横取りなんて絶対ぜーったい許さない! 私の前でよくもキスしてくれたね! アンタに今すぐ死んでほしいって思った!」

次から次へと酷い言葉に、目を瞑りたくなった。



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