この手、あの手。


教室に着くと、案の定みんなにからかわれた。


「実乃梨おはよー」

聖治が汗を流しながらやってきた。


「おはよ。今日もお疲れ」

「おう!」

聖治がニカッと笑ってきた。

私も微笑み返したが、直ぐに真剣な表情に戻した。


「あのね、聖治」

「ん?」

聖治は何かを悟ったように、笑顔を止めた。


「今日の昼休み屋上に来てくれるかな? 話したい事があるの」

「……分かった!」

聖治は寂しそうな顔をしながら答えた。


ごめんね聖治。

お願いだから、そんな顔しないで……。



その後私と聖治は、昼休みが来るまでずっと喋らなかった。

聖治に言う言葉を考えてた私は、授業に集中する事が出来なかった。



< 288 / 316 >

この作品をシェア

pagetop