執着王子と聖なる姫

 ブロンドガール、レベッカ

手を引かれて桜の絨毯の上を歩きながら、聖奈は数十センチ高い位置にある愛斗の不機嫌そうな顔をジッと見上げた。それに気付いた愛斗が、ピタリと足を止めて視線を落とす。

「どした?」
「怒ってますか?」
「別に」
「ごめんなさい。嘘をつきました」
「知ってる」

メーシーと同じく察しの良い愛斗には、聖奈の嘘や誤魔化しは当然お見通しだった。けれど、敢えてそこにツッコむことはしない。

あくまでも聖奈の口から白状させることに、サディスト愛斗は拘っているのだ。

「メーシーが心配してます」
「ん?」
「セナがマナに乱暴されてるんじゃないかって」
「へぇ」

よく晴れた春空を見上げ、愛斗は興味なさげにそれを軽く聞き流した。

加減はわかっているつもりでいるし、聖奈も特に嫌がる素振りは見せない。だからそれでいいじゃないか。と、愛斗は「マリ様理論」ならぬ「マナ様理論」を展開させる。

それに、何より自分達のことに干渉されることが気に食わないのだ。今まで散々放ってきたのだから、これからも是非そうしてほしい。帰ったら釘を差してやろう。と思いながら、愛斗は手を握る力を少し強めた。

「嘘ついてごめんなさい」
「そんなに怒ってねーよ」

クシャリと頭を撫でてやると、不安げに聖奈の瞳が揺れる。

「んな顔すんな」
「だって…」
「怒ってない。もういいだろ?」
「んー…わかりました。今日家に来るんですよね?」
「おぉ」

改めて言われ、愛斗は少し姿勢を正した。
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