執着王子と聖なる姫

 魔女と悪魔とブロンドガール

オッドアイのモデル体型美少年と、これまたオッドアイのモデル体型ブロンドガールが、腕を組みながら仲睦まじげに街中を闊歩する。

二人揃って歩けば、何やら雑誌か映画の撮影のようで。それを遠巻きに見ているランチタイム中だろうOL達などは、「ほぅ…」っと感嘆の息を洩らしたりもしている。

けれど、現実はそう夢の世界の如く美しいものではないのだ。

「落ちたか?」
「まだ。あれはてこずりそうだ」
「まっ、俺の父親だからな。早く落とせよ。あんま時間掛けてっとマリーに感付かれんぞ」
「修羅場もいいね」
「バーカ。そうなりゃThe ENDだ。メーシーはマリーを取る」
「世知辛い世の中デース」

美形が二人揃って不倫の相談である。OL達の夢もぶち壊しだろう。


爽やかな夏空の下、実に不健康な二人。ピタリと足を止めたのは、とあるカフェの前だった。

「ラーメン、なさそうな店だね」
「あったら怖いわ」

「いらっしゃい、愛斗君」

声を掛けたのは、顎のラインで切り揃えた黒髪を揺らし、優しげに微笑む女性。年の頃は、40代後半。

「ども」
「あれ?こないだと彼女変わった?」

浮気か何かだったらどうするつもりだ…と思いながらも、愛斗はにっこりと笑った。

「浮気してるデスカー?悪い男デスネ」
「いちいち乗るんじゃねーよ」

パシンッとレベッカの頭を叩き、愛斗は店の中へと足を進めた。その様子をにこにこと見つめている女性を振り返りながら、レベッカは愛斗の耳元に唇を寄せる。

「マダム好き?」
「そりゃお前だろ。あれはメーシーの幼なじみだよ」
「MEIJIの?」

マリがあれであれだけに、ここでこうしてカフェを営んでいることは伏せられているのだけれど、愛斗にだけはメーシーがこっそりと教えてくれたのだ。
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