執着王子と聖なる姫
可愛い生き物だ。
もう少し空気が読めれば言うことは無いのだけれど、それはコイツに言っても無駄だと思う。

「だからセナがキスするんです。それでマナが気持ち良くなったら、マナはセナが大好きだってことですから」
「いや、俺もっと違うことで気持ち良くなりてーんだけど」

ついつい本音が出てしまったのは、不可抗力ということにしておいてほしい。あんな声を聞かされ、その上サラリとそんなことを言われてしまえば、健全な男子ならば誰だってそうなるはずだ。

「違うこと?何ですか?」
「こうゆうこと」

膝を立ててその間にセナを収めたまま、指先に引っ掛けて肩紐をスルリと落とす。好都合なことに両腕を下ろしていてくれたものだから、妹のお気に入りの瑠璃色のスリップはいとも簡単に腰辺りまで擦れ下がった。

「知ってる?この状態で男と女がすること」

月明かりの下に、白い肌が晒される。目を見開いたままのセナは、身動き一つせずに俺を見つめている。そのまま首筋に、鎖骨にと唇を触れさせると、漸くビクリと肩が揺れた。

「マナ?」
「ん?」
「何するんですか?」
「さぁ、何でしょーか」

チラリと視線を上げながらニヤリと笑うと、ふっと猫目が緩やかに細まった。何だ、その余裕の顔は。経験の無い女が男に胸を晒しながらするような顔ではないはずだ。

「何?」
「マナは寂しいんですね」
「は?」

ギュッと頭を抱えられ、むにゅっと胸に顔を押し付けられる。

なるほど。これはいい。
父も一度くらいこの感覚を味わうべきだ。

何故か冷静だった俺の頭は、ふとそんなことを考えた。

「セナがイイコイイコしてあげます」
「いやいや。そうゆう状況じゃねーよ?今のお前」

ふにっと胸を掴むと、その上に手が重ねられた。

「気持ち良いですか?」
「ん?それは俺が訊くべきことだけど」

頭を抱く手が退けられ顔を離すと、更に手が重ねられた。
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