甘い誓いのくちづけを
「益々会いたくなったけど、そういう訳にもいかないし……」


前半は悪戯っぽく、後半は困ったような声が響いた。


あたしの心臓は、もちろん前半の言葉に反応して跳ねた。


「楽しくてすっかり忘れてたけど、実は後5分で会議が始まるんだ」


腕時計を確認すると、うちの会社の昼休みももう終わる時間。


「という訳で、本題に入ってもいいかな?」


「本題、ですか?」


少し考えれば、何か用事があったから電話を掛けて来たのだと気付くはずなのに、あたしは今の今までそんな事を考える余裕も無かったのだ。


時間を気にしつつも、その内容の方がもっと気になって小首を傾げる。


それを見計らったように、理人さんが柔らかい口調のまま続けた。


「来週の日曜、会えないかな?」


< 143 / 600 >

この作品をシェア

pagetop