甘い誓いのくちづけを
それからどうやって家に帰って来たのか、よく覚えていない。


あの後、仕事の合間に抜け出して来てくれた理人さんの携帯に呼び出しが入って、彼はその相手と1分程話した後で何事も無かったかのように颯爽と笑顔で立ち去った。


あたしはそんな理人さんの後ろ姿を見つめたまま、しばらくその場から動く事が出来なくて…


ようやく足が動くようになってからも、その歩調は全く覚束(オボツカ)なかった。


な、何が……起こったの……?


未だに状況を理解出来ていないのに、胸の奥で感じているのは確かにあった甘さの余韻。


夢じゃない、って事……?


それでも半信半疑だったけど、こんな時にありがちな頬を抓るという行為がこれが現実なのだと教えてくれた――…。


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