甘い誓いのくちづけを
不思議に思って、ハンカチで目元を押さえたまま男性(カレ)を見る。


「そんなに強く押さえたら、後で腫れるよ」


困ったように微笑む表情は、あたしの事を本気で心配してくれていた。


こんな時だからこそ、自分に向けられている優しさがとても温かくて…


だけど、少しだけ痛い。


「す、すみません……」


「俺に謝らなくてもいいけどね」


クスクスと笑った男性(カレ)が、さっきまでよりも幼く見える。


その笑顔に、ほんの少しだけ救われた気がした。


「ねぇ、ルカ」


ダークグレーの綺麗な瞳が、あたしの瞳を真っ直ぐ見つめている。


「少しだけ、付き合ってくれない?」


その質問に、あたしは考えるよりも先に頷いてしまっていた。


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