甘い誓いのくちづけを
金曜日の夜中――。


地元のローカル線の終電で実家の最寄り駅に着くと、父が車で迎えに来てくれていた。


母から聞いて事情を知っているはずなのに、その時の父は文博の事には一切触れないでいてくれて…


有り難かった反面、車内ではぎこちない会話しか交わせなかった。


実家に着くと、母が沸かしてくれていたお風呂に入って、その後は三人でビールを飲んだ。


それからしばらくは、仕事やボランティアなんかの他愛のない話をしていた。


居た堪れない気持ちを抱えながらも不自然な程に明るく努め、二本目の瓶ビールを空ける頃にようやく意を決して文博との事を切り出したけど…


あたしの話を黙って聞いてくれた両親は、最後の最後まで彼との事を深く追求する事は無かった。


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