甘い誓いのくちづけを
どうしてわかったのかな……?


母は昔からその手の事に鋭くて、あたしに好きな人や彼氏が出来た時は、いつもすぐに見抜かれてしまっていた。


あまりにも鋭敏過ぎる母に驚いて、尾行や盗聴でもされているのかと本気で考えた事があるくらい。


もちろんそんな事は有り得ないとは思うけど、それにしてもあたしはそんなにわかり易いのだろうか。


母にあんな事を訊かれた今朝は、狼狽えてしまったけど…


冷静になった今は、離れていても親子なのだと感じた。


そんな事を考えているあたしを乗せた電車が、速度を落として見慣れた駅に滑り込んでいく。


さっきまで見ていた街の風景に反して、上京してから住むようになった街の景色は賑やかなのに…


今日は、何だか少しだけ寂しげに見えた――…。


< 253 / 600 >

この作品をシェア

pagetop