甘い誓いのくちづけを
大きく深呼吸をして、背筋をピンと伸ばす。


予定よりも遅くなってしまったから理人さんには連絡を入れず、文博と別れたその足でマンションに向かう事にした。


目の前にそびえ立つ綺麗な建物に、改めて理人さんの立場を思い知らされるけど…


今はもう、そんな事で怯んだりはしない。


英二さんや、理事長の言葉。


そして、さっき文博と話した事。


それらを思い返せば、理人さんと向き合う事がどれだけ大切な事なのかが、痛い程にわかるから…。


それをしっかりと胸に刻んで、握っていた携帯を操作してから耳に当てた。


程なくして、無機質な呼び出し音が鳴り始める。


その直後、マンションの玄関前にゆっくりと入って来た黒い車が、目の前で停まった。


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