甘い誓いのくちづけを
飲み慣れてはいないけど、記憶に深く刻まれたカクテルの名前。


それがあたしの視線を食い止めるのは、至って簡単な事だった。


理人さんの手によって僅かに傾けられたワイングラスの中で、透き通るように美しい赤が揺れる。


それに惹かれるように前を見つめていると、彼と目が合った。


ほんの一瞬、まるで時間が止まったかのように思えた。


周りにはたくさんの人がいるのに、理人さんの瞳は確かに自分(アタシ)を真っ直ぐ見つめている。


その視線に囚われたまま瞬きすら出来ずにいると、程なくして彼が瞳を緩めてフワリと微笑んだ。


「キールのカクテル言葉は、“最高のめぐり逢い”です」


それはあたしがよく知っている、あの柔らかくて優しい笑みだった。


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