甘い誓いのくちづけを
「……まだ怒ってる?」


困ったような微苦笑が、あたしに向けられる。


「別に怒ってる訳じゃ……」


お風呂から上がってあたしの髪を乾かしてくれた理人さんから視線を逸らし、未だに熱を帯びたままの頬を隠すように俯いた。


「その顔は、恥ずかしさのせいだと解釈してもいいのかな?」


クスクスと笑った彼は、無言のまま少しだけ顔を上げたあたしの唇にキスを落とし、フワリと微笑んだ。


「ほら、朝食にしよう。今日は瑠花と行きたいところがあるんだ」


「……行きたいところ?」


「うん」


「どこですか?」


「瑠花が笑顔になれるところだよ」


理人さんは意味深な笑顔でそれだけ言うと、この話を終わらせるかのようにテーブルに促した。


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