今さらなのよ!
王子の血

朝の目覚めに盛名は頭を押さえていた。


「今頃になってどうして・・・。」


悪夢の続きを見ようとするとひどい頭痛が襲ってくる。



仕事の合間にうっかりうたた寝でもしようなら、同じ悪夢が再生されてしまい、さすがに盛名は気がつくと、隆祐の勤務する山畑商事の玄関前に立っていた。


サングラスに帽子をかぶってはいても、ファッションセンスの良さと長身とで近くにいる女性は振り返ったり、足を止めたりしていた。



取引先からもどってきた隆祐はすぐに盛名であることがわかったが、直接声をかけることに困ってしまった。


声をかけたら、あとでどれだけの女性社員に誰なのかどういう関係なのかを追及されるに決まっている。



3mほど離れたところで小さなうめき声をもらした。


「くっ・・・目立ち過ぎて接触できないじゃないか。」



すると、隆祐に気付いた盛名は携帯を手にして、声をあげた。



「あ、申し訳ありません。これから私も駅の方に向かいますので、もう少しお待ちいただきたいのですが・・・。」
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