組対のデカ
第18章
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 公安部のフロアに丸岡を訪ねてから数日が経ち、六月に入った。


 元交通部の警官だった速水が刑事部に異動となり、当時から女性刑事を忌み嫌っていた長谷川はまるで目の仇のようにしていたらしい。


 九年前の二〇〇三年に刑事部から独立して組対部が出来、旧捜査四課も組対四課に編成された。


 長谷川も組対四課のデカとして、河村組や大塚会の人間たちを追っていた。


 ヤツらが尻尾を出さないか、気が気じゃなかったらしい。


 それに長谷川は速水が刑事部に出入りするのを執拗なまでに嫌っていたようだ。


 七年前発生した新宿区内のホテル一室での殺人事件で速水の捜査が失敗し、鬼塚賢悟を誤認逮捕するという失態を生んでしまったのは、警察としても失点だった。


 いわゆる警視庁指定31×号事件で、未解決事件として警視庁のデータベースに載っていたので警視庁の刑事たちは皆、把握している。


 速水が緊急逮捕した鬼塚はダガーを所持していたので、銃刀法違反に問われた。


 だが取調べの段階でホテル一室での殺しの実行犯じゃないと断定できたので、すぐに釈放されている。
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