組対のデカ
 組対五課としては倉田からの指令を待ちながら、同時に転落死した長谷川勇平の事件を追っている一課のことが気になった。


 あれは全うに考えれば自殺だが、自殺に偽装された他殺だったとも考えられる。


 他殺だとして、動機は一体何なのか……?


 長谷川は退職したマル暴である。


 そのような人間を自殺に見せかけて殺すことで、何か得でもあるのだろうか……?


 さすがに組対四課のデカたちも先輩があんな形で亡くなったことを嘆いていた。


 生前の長谷川のことを聞く上では、今現在一課でも一つの班を率いる越沼に目を掛けていたらしい。


 一課の刑事も組対四課のデカも事件を捜査すると意味では一緒だが、長谷川は越沼に期待していて、いずれ一課でも上の方に行くものと踏んでいたようだ。


 それに対して、女性警部補の速水には冷たく「女はデカなんかやるんじゃねえぞ」などと口汚く言って罵倒していた。


 速水と越沼が何かと仲が悪いのは、そういった先輩刑事の偏った教育方針が原因だった
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