ツン(デレ)ツンな市岡くん
「ほら、行こ?」

くいっ、と奈南のブレザーの裾を引っ張って市岡くんは促す。

あたしじゃなくて、奈南を。

「ちょっと遊魅!!あんた言いなさいよ!!」

「いいよ~。あたし今日は松波と帰るからさ、ね?」

「コイツもこう言ってることだし帰ろうよ奈南ちゃん」

「奈南と市岡くんまた明日ね」

精一杯の強がりで言ったことなのに、市岡くんはあたしを呆れた目で見て言った。

「彼氏の前で他の男と帰るとか言わねえだろ。普通」

「なっ…」

その彼氏が彼女の前でその女友達と帰るのは許されるのっ!?という言葉を飲み込んで、あたしは無理して笑いながらバイバイをする。

「遊魅っ…」

奈南が止めるのも振り切ってあたしは廊下の向こうに走っていく。

「市岡くんと話せた~」

そう叫びながら。
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