ある冬の日に。[冬]
ある冬の日に
私は雪の匂いが好き。

冬は嫌い、寒いから。

でも、雪の匂いは好き。

満月の夜、晴れた空からチラチラと降る雪の匂いが一番好き。

冷たい空気が静かに肺に進んでいって、全身を駆け巡る。

あの何とも言えない匂いが好き。

どんな匂いかなんては言えない。

だって雪の匂いは雪の匂いだから。



初めて会った時、彼女はそう言った。

正直、雪の匂いなんて分からないけど、俺はただ頷いた。

彼女の横にいるために。

ただ、彼女の横にいたかったから…。

「変なこと言うでしょ?私。」

彼女はそう言って笑った。

「そんなことないよ。」

俺は言う。

満月の夜、チラチラと降る雪の下で、俺は彼女に出会った。
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