春よ、来い
アクシデント
　この日は週のはじめゆえの仕事量の多さからすっかり疲れはて、しかもあまりの寒さに凍えそうで、僕はとにかくはやく眠りたかった。

電車を降りて急ごうと駅の階段を駆け下りたとき、僕は駅の階段の入り口で誰かと正面衝突、バランスをくずして転倒した。

相手も派手にふっとんだようだが、自分も痛いし、このラッシュ時の人混みの中で転んだことの恥ずかしさもあって、カーッとなった。

なんだよ、右側通行だよな、ここは。俺の方があってんじゃねえか。

その時、ぶつかった相手が起きあがって自分の背後に近づいてきたようだった。僕は思わず怒鳴ろうとした。が、

「だいじょうぶですか？」

　てっきりサラリーマン相手だと思ったのに、声が女性だったので拍子抜けした。なんだよ女かと思い振り返ってみると、そこには見慣れた小柄な女性が立っていた。


彼女じゃないか！

「だいじょうぶですか？」


　再び彼女が聞いてきた。
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表紙・目次

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