太陽には届かない

一期一会


『吉田、アンタさぁ、一期一会って言葉知ってる?』


急に何言ってんだオマエ…というような顔で、吉田は陽菜を見る。


『簡単に言えば、一生に一度の機会って事なんだけど。』


『オマエなぁ…オレだってそのくらい分かるつーの。高校同じだぜ?』


『あはは、そうだった。』


吉田は呆れたようにため息をつく。何だか今日は吉田に呆れられてばっかりな気がするなと陽菜は苦笑いした。


『何かさ、こうやって吉田と会ったのも、課長やカオリさん、由梨や有田くん、それに泰之と会えたのだって、一生に一度の機会だったのかなぁって思うと、感慨深いじゃない?だから、大事にしようって思うわけ。相手をね。』


『でも、相手はそうじゃない。』


吉田はまたも、肯定的な言い方をする。陽菜はその的確さに、いつも驚く。


『吉田には参るなぁ…。うん…うん、そうだよね。本当にそう。私が思うほど、相手は私を思っていないとおもっちゃうの。』


『そうだなぁ…。そうなのかな。』


『でもね、相手も同じこと思ってるかも知れない。私が思うというその方法と、相手が思うその方法は、全く違うのかも知れない。』


吉田は海岸沿いの国道から、わき道にそれると、ちいさな駐車場に車を止める。


『とりあえず降りようぜ。』


吉田に誘われて、陽菜も助手席のドアを開け、外に出る。
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