触れないキス
「……すごく綺麗だよね、この人魚姫の絵。あたしも好きでたまに見に来るの」

「そうなんだ? これ先生のお父さんが持ってきたもので、もう80年も前に描かれたものらしいよ」

「そうなの!? 知らなかった!」


目を丸くし、可愛らしい笑顔で無邪気にはしゃぐ彼女に、彼も心が温かくなるのを感じていた。


会話が途切れて、笑い合っていた二人はふいに真顔に戻って見つめ合う。

時間が止まるような、不思議な空気が二人を包む。


そして、少年が口を開いた。


「僕は柚希。キミは?」

「あたしは瑛菜……」

「よろしくね、瑛菜ちゃん」


天使のような微笑みを浮かべて右手を差し出す彼に、

彼女も満面の笑顔で、そっと手を重ねた──。





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