触れないキス
そらを好きになって、ようやく柚くんのことをしっかり思い出に出来そうだったのにな。

今度はそらのことを忘れなければいけないなんて……。


「でも、まだもう少しだけ……」


想っていたっていいよね。あの占い師の子も、気が済むまでって言ってたし。

それだけで少しラクになる気がするし、占ってもらって良かったかも。

本当に二人があたしを幸せに導いてくれるのか、転機が起こるのかどうかもわからないけれど……。


結局占いの影響を受けてしまっている私。

ぼんやりと考えを廻らせていると、皆の盛り上がりにはなんとなくついていけず、その様子をしばらくぼーっと眺めていた。


しばらくして、テンションの上がった凛が笑顔で私のもとへやってきた。


「このあと武田の家でまた打ち上げだって! 瑛菜も行くよね?」

「あ、うん! 行く行く」

「その前に部活に顔出してくるからちょっと待ってて! すぐ終わるから」

「はいよー。いってらっしゃい」


私はひらひらと手を振って、人混みを掻き分けて軽やかに走っていく凛を見送った。

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