真夜中のキス[短編]
「……美紗、ごめんな…」
翼はそっと、掴んでいた手を離した。
その手であたしの頬に触れて、コツン、とおでこをぶつける。
「…翼…?」
「…ごめんな、美紗。
寂しかったよな…?」
その言葉に、また、涙が出そうになる。
翼はあたしの身体を引き寄せ、抱きしめた。
―――もうこれで、ほんとに最後…
最後に、するから。
手を伸ばし、
翼の背中に腕を回した。
ギュッと、強く抱きしめる。
「…何だよ、さっきまで泣いてたクセに」
翼は少し困ったように、そう言って笑った。
もう、いいんだ。
だけど最後に、もう一度でいいから…
「ねえ、翼…」
「ん?」
あたしの身体を離すと、
翼は笑って、あたしの顔を覗き込んだ。
「……キス、して…?」