家元の花嫁【加筆修正中】


庭を探しても、姿はない。


残るは業者用の通用口のみ。


あそこしかない。


今日は業者の搬入が無いから、人通りはほとんど無い。


俺は必死に走った。


くそっ、着物じゃ無かったらもっと早く走れるのに…。


建物の裏手に回り、垣根を通り過ぎようとした時―――。


木の陰で、女の言い争う声がした。


「どういうつもりなの!?あなたみたいな一般人が、相手出来るような人じゃないのよ?」


「そんなこと、言われなくても分かってます!」


「本当に彼と結婚するつもりなの?冗談はやめてよ!」


「そんなこと、あなたに関係ないじゃないですか?」


やっぱり…ゆのの声だ。


そして…もう一人は…。


俺は2人の元に走り寄った。


やっぱり…椿だった。


しかも、椿はゆのを叩こうと手を振り上げている。


俺はすかさず、手を掴んでゆのを背後に隠した。


< 184 / 337 >

この作品をシェア

pagetop