君が見上げたあの空は

野うさぎに羊

歩美が足を止めたのは、明凪学園からそれほど遠くない、雛原公園の中だった。

雛原公園の敷地内には、動物園や神社が有り、中央辺りの巨大な湖には、ボート乗り場も有る。

明るいうちは人で賑わうこの公園も、日が陰り出して少し経った今、歩美に目をくれる人影は無い。





歩美は膝に手をついて、肩で息をした。

周りを見回し、ベンチを探した。





林の奥に一つ、ベンチを見付ける。

歩美は思った。

なんで、あんなところにベンチが?





自身で答えを出す前に、歩美は林を進み、なぜか手入れの行き届いたベンチに腰掛けていた。

息を整え、肩の力を抜くと、瞼が自然に降りてきた。



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