君が見上げたあの空は
歩美は、小さく吹き出した。

こんな、こんなに、こんなにも、単純なものだったのか。

こんなにも、ちっぽけなものだったのか。

あたしが抱きしめているものは。

必死になって、しがみついていたものは。



「愛歌さん」



愛歌はふふふと笑った。



「なあに?」



歩美は、手をほどき、愛歌の前に差し出した。



「ここから、貴方を、抱きしめたいと思っても、いいですか?」


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