岬の夕陽
出会い
あの年、史郎は北海道に旅行をした。

大学最後の夏休み、戦争も終わったばかりで、就職先も決まっていなかった。

父親は戦死し、母親も病死した。

里親はいい人たちだったが、やはり寂しさを感じずにはいられなかった。

辛い日々からのちょっとした現実逃避だった。

ところがひょんなことから帰りの特急電車に乗り遅れてしまった。

でも史郎はしまったというより、内心ほくそえんだ。

やはり家には帰りたくなかった。

家に帰ってしまったら現実に引き戻されてしまうような気がしたのだ。

だからもう1日だけ、どこかで時間をつぶしてから帰ることにした。
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