ホームレスな御曹司…!?
「あのさ、知香」


「ハイ?」


「1回捨てれば?」


「え…?捨て、る…?」


「そ、捨てるんだよ。気持ちが頑張り過ぎてる。溺れてるのに、助けを拒んでる。沈みそうなら浮き輪を使えばいいさ。親でもいいし、仕事に誘ってくれる凛でもいい。そんなんじゃ自立する前に倒れちゃうんじゃないかと、オレは思う」


「誰かに頼るって、そんな簡単じゃない」


「うん。オレもそう思ってた。今の知香を見るまでは。ま、いいや、続きは明日。このままじゃオレのコートに穴が開きかねない」


「え?」


「アイロン。煙が出てる」


「わぁっ!!」


考えに夢中で止まった手元のコートからは煙。
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