誠の紅桜に止まる蝶~番外編~
「あのね、佐之助さんに渡したいものがあるの。」

「渡したいもの?」

佐之助さんは不思議そうに首をかしげる。

「はい。これ。」

「これ・・・・着物か?」

驚いたように目を見張る。

「うん。今日選んできたの。気に入らなかったかな?」

「いや、まさに俺の好みの着物だが、急にどうしたんだ?」

「あのね、離れている間はこの着物を着るたびに私を思い出してほしいなって。」

そう言って沙織は少し寂しそうに微笑む。

俺は沙織を強く抱き寄せた。

「なに言ってるんだよ。お前を思い出さない日なんて1日もねえよ。だから心配するな。」

「っうん!!」

すこし泣きそうになり私うつむきながら頷く。

ああ、私はきっともうこの先不安にならないだろう。

だって、この愛しい人の腕にはなんの偽りもないから。

「着物早速着てみていいか?」

嬉しそうに佐之助さんが微笑む。

「うん。着てみて。」

こういうことを人は幸せと呼ぶんだと感じた。
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