小さな幸せ
広い部屋。

機能的に壁面に配置されている様々なもの。

視力がなくてもある程度生活できるように設計されているんだなあと

感心した。


「兄さん?」


浅野さんに容姿が良く似た人が立っていた。


身長がやや小さいかな?


ああ、覚えてるこの人。


大好きだった浅野先輩。


「兄さんなの?」


浅野さんがあたしを見つめ会釈をしてドアを閉める。


「先輩、私を覚えていますか?」


「和ちゃん?」


懐かしい、私の事をこう呼んだのはこの人だけだった。


「はい、鈴木和実です。浅野先輩。」


二人の間には何も会話がなかった。


静かに時間を戻すように同じ空間にいる事を感じていた。


『必ず迎えに来るから、その時は結婚しよう。』


彼の言葉にあたしはこう答えたんだ。


『じゃあ、その時あたしはすごくカッコいい女になってるから。

 先輩に忘れられないように頑張るね。』



『あんまりいい女になると心配だからそのままでいて。 

 和ちゃんはそのまんまがいいよ。

 そのままで僕を待っていて。

 約束だよ。』


『うん、約束だね。』





「和ちゃん、久しぶりに会う僕がこんなでごめんね。」



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