つめたいハートに火をつけて


部屋の片隅に置かれたベッドには、全裸の彼と女の人が体を横たえていた。

物音に気付いた彼が、こちらに視線を投げ掛ける。

「あ、絢子……。お前っ……」

あまりのショックに私は、口をパクパクさせて、なかなか言葉を発せずにいた。

そんな私を余所に、彼は女性の体を隠し、自身も見苦しくない程度身なりを整えて私の方へ歩み寄る。

「ねぇ、何しに来た訳?」

今まで見たことない程に冷ややかな目線で見下ろす彼。

そんな冷たい彼の姿を初めて目の当たりにして、頭が真っ白になりそうだった。

「……だって、電話をしてもすぐ切るし、メールの返信もない。すごく寂しくって、会いたかったのっ」

それでも、なんとか泣きそうになるのを堪えて、思いの丈を一息に言い切る。

彼は迷惑そうに、大きなため息をつく。

「……俺、お前より好きなヤツが出来た。もう、分かってると思うけど……」

彼は一旦そこで言葉を区切り、部屋の奥へと視線を投げる。

「遠距離になっても、お前とやっていけるとあの頃は思ってた。

だけど、実際過ごしてみて、俺には遠距離は無理だ。

今は、お前よりあいつにスッゲェ惚れてる。

ここらが潮時だと思う。俺たちこれで終わりにしよう……」


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