隣のオアシス

「明日からはまた十番地の水を汲みに行くしかないな。アキラもこんなんだし、しばらくは俺が行くか」

 不満そうに舌打ちをし、振り返ったガイは意外にも清々しい笑顔を浮かべていた。白い歯を見せ、再び前を向いた。

「悪いな」

「悪いと思うならあまりみんなに心配かけさせるようなことするなよ。あいつらも俺も今はみんな家族みたいなもんだろう」

「そうだな……」


 傷が疼いた。その痛みは、俺への罰かもしれない。今まで彼らの中から安心感を探そうともしなかった。自分から歩み寄ろうとしなければ、そんなものが見つかるはずもないというのに。

 彼らが俺を心配してくれたように、俺もまた彼らを大切にしていきたいと、今なら素直に思えた。

 瞼が落ちそうに重い。気がつけば空がすでに白み始めている。もう夜明けだ。二番地のみんなは俺が帰るのを今も待っているのだろう。ガイの話によれば、ここ最近は俺が出かけてから戻ってくるまで、誰ひとり眠らないということだから。まずは謝ろう。そして彼らになにかしてやりたい。今の身体では何もできやしないが、治ったら、きっと。

 その前に、ユリにお礼を言いに、またあの池に行こう。

 今度は一人ではなくガイも連れて。

 ガイの背中で、俺は静かな睡魔に誘われて、ゆっくりと目を閉じ意識を手放した。
< 21 / 21 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

花嫁に読むラブレター

総文字数/107,449

恋愛(その他)227ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
孤児のマイアは、ともに孤児院で暮らすステイルのことが大好きだ。 ちょっと冷たく、ちょっと無愛想。 けれど、それでもマイアはステイルが大好き。 毎日平和に暮らしていたある日。 マイアを嫁にと求める男性が現れた。 彼の名はユン。 ステイルとは正反対で、おっとりとした優しい青年。 16歳のマイアが選んだ相手とは――。
ウサギの配達屋

総文字数/3,990

絵本・童話6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
カラダが透けてる派手なドレスを着た貴婦人。 歌をうたう蜘蛛。 クワガタに喋りかける老人。 ……配達屋の恰好をした、うさぎのブラウニー。 ぼくが今見ている「コレ」は夢?
場所

総文字数/1,510

その他2ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私の好きなものは、 脂ののった秋の秋刀魚と白いご飯。 それと、 おばあちゃん。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop