あいたっ

話は戻り、帰宅した。
家の玄関の前で、母は兄に鍵を渡して自分で開けさせた。
兄は、鍵をかけたり開けたりして褒められることがとても好きなのだ。

鍵を回すのは単純だが、うちの鍵は特殊で、回したらまた縦に戻さないと開かない。
それに苦戦する兄の横で、私はサポートをする。

「こうやって…」

兄の手を掴んで一緒に回す。
そして鍵が開いて、兄が勢いよく扉を開けた。

すぐよこに私がいるのにも関わらず。

(ドゴッ!)

「あ痛っ!!」

兄の精一杯の力で開かれた扉は、見事に私の顔面を直撃したのだった。

「開(あ)いたっ!」

対して兄は、扉を開けることに成功し、満足気な表情を浮かべる。
笑顔で「あいた!あいた!」と言っている。

「ははは…雅大丈夫?」

「大丈夫……(^∀^;)」
兄よ…あなたの横で顔面を負傷している妹に少しは労りをくれ……。



そんな春の午後の他愛もない話。
兄は今日も元気です。
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