深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





思っていたとおりほとんど眠れなかった昨夜。
だから私は、今日からあんなに嫌だった化粧をし始めた。


…顔色の悪さや、目の下の隈をこれ以上芦谷さんに見られたくない。
あんな風に言ったんだ。
せめてもう心配をかけるようなことはしたくなかった。






「ねぇ、環ちゃん?…直人となんかあったんでしょう?」


木曜の夕方、私がたまたま芦谷さんのもとを訪ねてきたユウさんにお茶を出すと、彼はまじまじと私の顔をのぞき込んだ。



「え、…何もないですよ?」


私は取り繕ったような笑みを浮かべてそう答える。





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