夕日塔の約束
懐かしい声が耳に届いて、時間が止まった様な気がした。


ぶつかって手で覆っていた顔を、5秒位時間をかけて上に上げる。


「あの………さ……」


私がぶつかったのは―――…美術室に来る前に見かけた、赤髪の男の子。


後ろには、楽しそうに会話していた茶髪の男の子もいる。


「イ…ヤ………ッ!!」


誰だか認識した瞬間、私は猛スピードで男の子の横を通り抜け、走り出した。


「夕穂!!」


稚鶴が叫ぶが、無視して走り続ける。


「ハァ……ハァ……」


自分自身でも気がつかない内に、涙が一滴だけ頬を伝っていた。
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