あなただけを愛したい
しばらく走ったら、もう家に着いてしまった。



「送ってくれてありがとう」


「ん」



あ、そういえば……



バッグの中から、小さな包みを取り出す。



「これ、バレンタイン。きっと学校でいっぱいもらったと思うけど」



そう言って先生に手渡す。


毎年バレンタインと誕生日は、女子生徒に囲まれてるから。



「サンキュー。あれはもらったうちに入らねぇよ。俺は柑那からもらえればそれでいい」



ドキンッ――…



先生の言葉ひとつで、あたしの心臓はこんなにも、大きく音をたてる。


こんなことが続いたら、いつかあたしの心臓は壊れちゃうな。



「じゃあ」



そう言って車から降りた。



「ん、また電話する」


「うん、おやすみなさい」


「おやすみ」




走り去っていった先生の車が見えなくなるまで、ずっと見ていた。
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