あなただけを愛したい
茜さんはさっきまでの強気な態度とは異なり、今にも泣きそうな顔をしていた。



“あなたの子を産んだの”



それ、ほんとなの?



航の顔を見ると、まったく無表情で何を考えているのか読み取れない。



「わけわかんねぇこと言うな」


「ほんとだからね。この春から小学生になったの」



小学生?


そんなに大きな子?



「……」



どうしよう。


胸が痛い。


頭の中も、何が何だかわかんないほどにぐちゃぐちゃだ。



「……帰る」


「は?」



気付いたらそう呟いていた。


この場にはいたくなかった。



「ちゃんと、話を聞いたほうがいいよ」



違う。


こんなことを言いたいんじゃない。



「今日は帰るから」



ほんとは帰りたくない。


この不安を拭い去るように、航にぎゅって抱き締めてほしい。


でも……



「じゃあね」



そう言って背中を向けた。



「柑那、待てよっ」



航があたしの腕を掴んだ。
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