あなただけを愛したい
「ニヤけてんなよ?」



突然、隣から発せられた不機嫌な声で、我に返った。


そうだった。


あたし今、竜一の車に乗ってたんだった。



「相変わらず、顔に出やすいんだな」


「えっ」


「おまえはすぐに顔に出る。悲しい時はすぐに泣くし、嬉しい時はこうやってニヤける」



確かに……


顔に出やすいとはよく言われるけれど。



「何でこうタイミングが悪いんだろうな」



竜一は、溜め息混じりに呟くけれど……


タイミング?



「なんのこと?」


「やっと彼氏候補まで来たのにな。あと一歩だったろ?」



あと一歩?



「何が?」


「彼氏への昇格だよ」



あ……


確かに、こうやって蓮くんが来て、あんなことを言われなければ、竜一の『彼氏』への昇格があったのかもしれない。



「なあ柑那」


「ん?」
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