カブトムシを埋める
「元気な子が好きなんだ?」
「うん」

やっちゃんはひたすら穴をほっていて、ずっとうつむいていた。
わずかに残った夕日が、やっちゃんのほっぺに長いまつ毛の影を落としていた。


ゲームが上手いとか、長い髪が好きだなんて言わなかったな。


ごく浅いけれど、小さな穴が公園の真ん中に空いた。やっちゃんはその中に、死んだカブトムシを収める。
これでおしまい。
埋葬は、あっけなく終わった。

「やっちゃん。」
「ん?」
靴で、カブトムシを埋めたところを踏み固めている。
「私、もう遅いから帰るね。」
「ああ。気をつけて帰れよ。」


私は、やっちゃんに背を向けて、足早に公園を後にした。おんぼろの自転車。かごに、使わなかったポケモン人形。
日はすっかり沈んで、もう薄暗くなりはじめている。
やっちゃんは、平然とした顔で、空になった虫かごをかかえて、こっちに歩き出してくるだろう。



やっちゃんはきっと追いかけてこない。



私は振り向かずに、自転車をこぎ出した。


多分、やっちゃんはもうカブトムシを飼わないだろう。










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