かな子
妹は、やすらかな顔で、すやすやと眠っていた。私のベビーベッドの中で。
私はベビーベッドに駆け寄った。どけ。そこは私の場所なのに。
私の場所をとらないで。夢中で私は妹の体を引っ張った。妹はいつのまにか重くなっていて、なかなか動かない。
「どいて!どいてよ…」

私は、ベビー服をつかんだ手に渾身の力を込める。妹の小さな体は、床の上に崩れ落ちた。

さっきのやすらかな顔が、あっという間に真っ赤でくしゃくしゃになった。
耳を塞ぎたくなるような泣き叫ぶ声。
「どうしたんだー!?」
バタバタと廊下を走る音。
おばあちゃんが、あわててこっちにやってくる。

私はぼうぜんと、泣く妹を見下ろしていた。すごく重かったのに、
妹の手足はおどろくほど小さく見えた。

でも、私は怒られない。だって私は、正真正銘の子供なのだから。





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