彼の薬指
いくつか離れた場所に座る彼に、


『隣に座ってもいい?』


と話しかけてみる


日ごろ、人見知りは激しくないにしろ
そこまで話しかけないわたしに、自分でも驚く


ただ、もっと彼の声が聞きたいと思った
まだ時間が許すなら、
もう少し話を聞いてみたくなった



彼は少し戸惑っていたようだけれど、
すぐに笑って


「どうぞ」


と、隣の椅子を引いた



きっと、少し酔っているから。


頬が淡く染まっているのも、
脈打つ鼓動が、ほんの微かに早いのも。
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