みるくとりんご[短編]
最近、君と話すのが、否、君と会うことが楽しみになってきた。
なんで? なんて誰かに聞かれても、絶対に教えてあげないけどね。


みる【く】とりんご





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「はっ? 千葉君と放課後デート?」


昼休み、早弁の残りの弁当を頬張っていた私と希美。


何気なく勢いで、現国の時間の千葉との会話を希美に報告すると、希美は思いのほか驚きを示した。



「え? そんな驚くべきこと?」


「うん。驚くべきこと」


「なんで?」




なんて、気怠そうに聞いてやると、希美は呆れたようにため息をついた。



「だってあの千葉君だよ」



「どの千葉だよ」



「だから、あの誰とも関わらない天涯一人狼男の千葉君が、アンタと放課後デートだよ?」



「だから、みんな千葉のこと誤解してんだって。アイツ超普通だし」


案外喋るし。話わかるし。ちょっと冷めてるけど、私にはあれくらいがちょうど良い。



「そーかもしんないけど、でも何でそんな噂流れたんだろ?」


「さあ? 噂って結構やっかいだから。それにここ一応進学校だし。髪茶色いだけでも目立つじゃん?」



「そんなもんかな?」



「そんなもんだよ」



そう言って私は、お弁当の最後の一口を口に放り込んだ。


そして、時計を見やる。


丁度、12の数字を指している二本の針。



放課後までは、あと三時間ちょい。



何だかんだで、放課後を楽しみにしている自分には気づかないふり。
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