キ ミ ガ ス キ
「で、付き合い始めたの?」
「うん!!」
桜が散り始めた4月の半ば。
人生で一番嬉しいことが起きました。
「綾、あんた騙されてんじゃないの?」
「そんなわけないじゃん!!
あんな素敵な人があたしを騙すなんて、ありえない」
「つい先週まで名前も知らなかったくせによく言うよね。」
親友の芽衣子は呆れたようにため息をはく。
ようにって言うか呆れてるんだけど。
でもさ、好きなんだから仕方ない。
好きな人から付き合おうなんて言われたら、付き合っちゃうよ。
「でもさ、あの古賀がなんでいきなりって感じ。
綾と古賀って接点あったっけ?」
たしかに。
あたしと彼が話したのなんて、先々週くらいな気がする。
もともとあたしは、彼のことが好きだったけど。
「古賀くんもあたしのこと好きだったとか?」
なんて幸せボケを言ってみても、芽衣子は嫌そうな顔をするばかり。
なんだか自信なくなってくるな。
「あ、噂をすれば」
と、芽衣子が指を指した先には彼の姿。
あたしは急いで鞄に荷物をつめ、芽衣子に別れを言うと、彼のもとへと向かう。