北向きの枕【迷信ナあれこれ】
 「まあ、冗談ですよ」
 つまらないという様に歌舞伎沢兄は吐き捨てると、再び小岩井を観察を始めた。
 「小岩井くん。最近模様替えしませんでした?」
 不意に歌舞伎沢妹が質問を投げかる。それを聞いた小岩井は一瞬体をビクリと跳ねさせたが、顔を逸らし、だんまりを決め込む。
 「ああ、確かに模様替えしてたな。家具の位置がかなり変わっていた」
 小岩井の静かなる講義も無視して、大橋が変わりに返答する。
 「ちょっ! 大橋勝手に答えんなよ!!」
 大橋はそんな小岩井の抗議も無視して話を進めた。
 「しかし、それがこの眠り虫に憑かれた様な現象と関係あるのか?」
 「んー ちゃんと見なくては分かりませんが、もしかすると、もしかするかもしれませんね」
 相変わらず抗議を続ける小岩井の口にからしレンコンを放り込んだ大橋は更に話を進める。
 「危険なことだったりするのか?」
 そう尋ねる大橋に歌舞伎沢兄は神妙な面持ちでこう答えた。
 「長いあいだ放置すれば命に係わるかもしれませんね」
 回答を聞いた大橋と小池は驚いた表情を隠せない。
 命の危機にある当人はといえば、先ほどのからしレンコンで未だに苦しんでいる。
 「よし、今日の帰りに小ちゃんの家に行こう!」
 小池はそう言うと周りに同意を求めた。
 「俺が許可する」
 「僕達も特に問題ないですよ」
 そして、小岩井の知らない間に話はすべてまとまったのである――
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