だから、笑わないで。
―第十章―惹かれる心



「ありがとうございましたー!」



店員が元気よく言う。
このおみせは最近みつけて、二人は通るたびに花を買っていく。
憂が好きそうなピンクと赤の薔薇。
それを綺麗に包んでもらい、花束にしてもらった。
それを杏子が抱え、先を急ぐ。



憂が倒れて一週間―。
お医者さんの判断はストレスからのパニック症候群。
幸い憂は発見も早かったため、対応がしやすいそうだ。


パニックの原因を解決するか、回避をしてくださいと言われたが、実のところ憂の親も、リンも杏子も原因がわかっていない。
憂もそれについては触れてこないし、無理に聞けばまたパニックを起こされるかもしれないと言う恐怖からだれもきけないでいた。



301と書かれた一人部屋の扉を開く。



「うーいっ!」



杏子はうしろから憂に抱きついた。



「ひゃあ…っ…!」
「おはなもってきたよ!はい!」
「…わー…綺麗…ありがとう!杏子、リンくん!」



憂は花束をうけとると笑顔をみせた。






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