そして優しい~番外編~
俺も最初は、照れて恥ずかしがるその反応が可愛らしくて、ついつい悪戯心に火が点いただけだったんだけど……何回かこうやって抱き締めていたら気が付いた。
『俺の腕の中にあるこの存在を大切にしたい』……そう改めて思うだけで、気力が湧く。
『今、この腕の中に手放せない温もりが確かにある』……そう感じるだけで、安心する。
でも、それは俺だけの事情で、実際に料理をしている方からしたら、本当に邪魔なんだと思う。
確かに万が一、包丁でケガをするとしたら俺じゃないだろうから、それはそれで大変だから、今日の俺は……。
「ふふん。おまえがそう言うと思ったから、包丁持ってない時まで我慢してたんだからなぁ♪」
そう、いつもと違って包丁の音がしなくなるまで待ったんだ。