君が恋に落ちるまで。




貸切の看板を出したはずなのに
バーのドアは容赦なく開け放たれ、
少し息を切らした彼が入ってきた。




ネクタイを緩めながら
一歩ずつこちらへと近づいてきて、




「 ・・・なんのマネだ 」




あたしの肩に手をおくと、
グイッ、と奏多さんから引き剥がした。




「 何って、話してただけだけど 」


「 話すだけなら近づく必要ないだろ 」


「 まぁ、そうなんだけど 」




”ごめんね”と悪びれなく謝る奏多さんは
楽しげに笑って、悠也さんはあたしの
耳に口を寄せて、




「 ・・・帰るよ、瑞穂ちゃん 」




そう言って、あたしを立たせた。






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