欠点に願いを

II






倉田雪……雪は、まるで子犬か子ウサギかの如く人懐っこい、うっとい事このうえない奴だった。
"ウサギは寂しいと死んでしまう"なんて、誰が言い出したか知らねぇーけど。
「俺、誰かに構ってもらわないと死んじゃうの」とでも言うように、誰彼構わず懐いた。…………幼稚園児か。


最初は雪の行動に戸惑っていたクラスの他の奴らも、次第に慣れていった。
それは、雪の色白さと華奢さも手伝っていたかもしれない。
雪は極端に病欠が多いという事を除けば、クラスのマスコット同然だった。



そして当然のように、雪は隣りの席である俺にも声をかけてきた。
最初は転校生で大変だと思って世話してやったが、次第に返事は「うるさい」になり、やがてシカトになって、あまりの華奢さに殴る気も失せ、結局はまた面倒を見てやっている。
……結局、最初の段階に戻ってきているだけって話で。俺は馬鹿か。



俺に懐いた雪は、必然的に俺と行動を共にする事が多くなった。
俺と一緒に理科室に向かう雪を見たクラスの奴らは、

「米本君、怖くない?」
「米本って他校にも轟く暴力野郎なんだけど…、殴られてない?」

と雪に質問しているようだが、俺は雪を殴った記憶も蹴った記憶も無い。





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