欠点に願いを





一人の男の人が舞台に出てきて、ドラムセットの椅子に座った。
ファン達から、「純希ーっ!!」と歓声が上がる。

そして男の人が次々と舞台に出てくる。
あたしは、四人目に出てきた人を見て、心の底から驚いた。


……だって、あの人は。
あたしのよく知ってる、健人じゃないか。
遠いから分かりにくいけど、あの金髪は、たぶん。


舞台に五人揃って、そのまま曲がスタートした。
殆ど聴いた筈の無い曲だけど、その曲はどこかFlugelの曲に似ている気がした。

よく分かんないけど盛り上がった。
あの日、健人がくれたペンダントが、胸元で少し揺れた。

そのまま一曲が終わり、ボーカルの人がマイクを握りしめ直す。


「こんばんは、ボーカルの拓哉です。初めての人もそうじゃない人も、今日は来てくれてありがとう。俺、喋り苦手だけど頑張りますね」






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