蜜色トライアングル【完】



「わぁ……」


外に出ると、辺りは一面朝霧で覆われていた。

湿気を含んだひんやりとした空気が肌にまとわりつく。

初夏の朝、瑞々しい緑が朝霧にぼんやりと霞み、とても美しい。


「きれい……」


木葉はペンションの敷地を出て、向かいの歩道から続く木道を歩き出した。

木道は三角形の湿地へと続いている。


昨日、おかみさんに聞いた話によると、湿地を一回りすると約一時間ほどらしい。

朝の散歩にはちょうど良さそうだ。


しばらく歩くと、深い霧の中に湿地が見えてきた。

ちょうど植物が咲く時期なのだろうか、湿原は色とりどりの花で溢れている。

木葉は花々を眺めながら木道を歩いた。


「……?」


木道の先に影が見える。

その輪郭には見覚えがある。


「……木葉?」


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